スレ田


 瞼の裏に明るさを感じて、森田はむっくりと体を起こした。昨晩余程焦っていたのか、カーテンが少し開いていて、朝日がベッドまで伸びている。
 ベッドサイドに置いてある時計に目をやると朝の7時を回ったところ。今日の仕事相手とは昼を回ったくらいの待ち合わせだから、もう少し寝れるだろう。
 そして柔らかい眠りに身を再び落とそうとして、隣にあった温もりが消えていることに気付く。

「………」

 寝室からリビングへ続くドアはぴったりと閉まっているから向こうの様子は判らないが、同居人は疾うに起きているのだろう。ベッドからは森田の熱しか感じられなかった。
 合理的な人だから、朝は時間を無駄にしないように起きたら直ぐにテレビをかける。流れる映像を見るというよりは、耳でテレビの音声を聞くと言った方が正解か。
 平井はどれだけ夜が遅くても、朝には必ず起き出して、テレビをかけながら新聞を読み、朝食を摂る。

 一方森田はと言えば、仕事の時間までだらだらと過ごすのが好きだったりする。
 それは今までの生活が生活だったからで、直ぐにサラリーマンのように規則正しくとはならなかった。
 同居している平井が、仕事に遅れないならその他は何をしてようとも構わない、というスタンスを貫いてるせいもあるだろうが。

 しかし、それでいい。
 端が冷たくなってしまったシーツを抱えて森田は思う。

 一人で生きてきた時間が長すぎて、森田は甘やかされることに慣れていない。

 今までも金に困った時などは、幾らかの男達と肌を合わせたことがあるけれど、朝起きても相手が絡んでくることが多く、辟易したものだ。
 尤も、相手はそれを望んで森田と寝るのだと判ってはいても、長年に渡って染み付いたものはそう簡単には離れてはくれなかった。
 ”ソウイウ”意味で寝るのと、肉体的な休息は分けて考えてしまうのが悪いのだろうか。
 金で得た温もりは所詮は金の繋がりであって、自分のものではないと思うのだ。

 とは言え、一時の温もりを追ってしまう所が自分にあるということも森田は自覚していた。
 それが森田の弱さであり、金に困らなくなった今でも同居人であり上司でもある平井と体を重ねている理由である。
 平井は嫌いではない。好きか嫌いかと聞かれれば、迷うことなく好きだと答えるだろう。
 だがしかし、それが恋愛感情までは伸びない。こうやって何度も平井を受け入れていると言うのに、恋愛対象ではないと思っている。
 好きならばもう少し一緒にいたいとか、一人寝は嫌だとか、甘ったるいことを思うものなのだろう。

 残念ながらその一般論は森田には当てはまらないようで、平井にそういったことを思ったことはないし、違う所で寝てくれる方がベッドも占領できるし、何よりも気を使わなくて済むといった感情が先に立つ。
 その面では平井も淡々としているところがあって、森田は今まで平井と顔を合わせていて気まずいと思ったことがなかった。
 体の相性も悪くはなかったし、仕事相手としても一流とときているのだから、これは上等だろう。文句のつけようがない。

「……………………」

 寂しく、なんてないのだ。
 温もりが欲しくなるのはどうせ一時だけであって、普段は思いもしない。
 それに昨日は久々だったこともあって、嫌と言うほど貪り合った。森田は十分温もりを感じたし、平井は手軽な性欲処理ができただろう。

「………ああ、くそ…」

 起き抜けに下らないことを考えていたせいで、眠気は何処かへ吹き飛んでしまった。
 平井は新聞を数種類、英字新聞まで混じるそれらを読むのに時間がかかるから、まだ朝食を食べている頃だろうか。

 そして暫く逡巡して、森田は冷たくなったベッドを後にした。


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スレ田が書きたかっただけです。でもあんまり擦れてない罠。