朝起きてすぐ、携帯で天気予報を調べたら雨が降るとでていて、同居人が台所に立っているのを知り、慌てて昨日の夜干した洗濯物を取り込む。
「お早う」
「ん…お早うございます」
「今から風呂か?」
「そのつもりです」
昨日は疲れてそのまま寝てしまったから、風呂に入ってはいない。それを同居人も知っているから、深くは聞かない。
朝の7時半、少々音を立てても文句は言われないだろう。
風呂からあがれば丁度よく暖まった空気。朝風呂に入った俺が風邪をひかないように、暖房をつけてくれてたのか。
知らない輩の方が多いが、私生活ではさりげない優しさをくれるのだ、この人は。
「飯は?」
暫く考えて、冷蔵庫に餅が1つあったことを思い出す。
それを伝えれば、同居人がそんなものあったか、なんて言いながら冷蔵庫をあける。
頭をがしがしとタオルで拭きながら、指をさせば吃驚された。その顔が面白くて少し笑ってしまったことは秘密だ。
賞味期限は大丈夫かなんて心配を余所に餅を受け取り、個包装になったビニールを破ってオーブントースターに突っ込む。
あとは適当にダイヤルを回せば勝手に焼きあがるだろう。
台所から離れ、仕事の準備に勤しめば、たんたんと窓を叩く音。いつも着ているシャツは乾いていただろうか。
何とか用意を終え、炊いてくれていた米と偉い人に貰った海苔でおにぎりを作りはじめる。
海苔弁の要領で、今日は塩じゃなくて醤油で味付けしようか、なんて思って、ふとオーブントースターに目をやると。
「ええええええ!!!??」
「どうし…うおっ」
オーブントースターから、出火。
買い替えようという同居人に対し、まだいけると騙し騙し使ってきた報いか。
もくもくと一生懸命に吐き出すそれは勢いを止めることなく、煙はやがて天井まで覆いはじめる。
「み、水…」
「馬鹿っ、まず布巾に水濡らして持ってこい。ちゃんと絞れよ」
「は、はいっ」
バタバタと音を立つが気にしてられない。台の上にあった布巾を掴むと同時に蛇口をあけ、水に濡らして固く絞る。
「銀さん、これっ」
トースターの口を固め、どうやら燃えるのに必要な酸素をできるだけ送らないようにしていたようで、火は殆ど消えていた。
「吃驚するなよ」
同居人は自分にそう釘を注意を促すと、トースターの口を一気に引き開けた。
沈静化していた火は酸素を得て勢いを増し、横に立っている自分の所まで熱が伝わってくる。
しかしそこは容赦なくかけられた布巾に追い込まれ、じゅうと鉄が冷える音を残して消え去った。
「…ねぇ銀さん」
「…なんだ、森田よ」
「……オーブントースター、買いましょうか」
「……そうだな」
そんな会話になったのは、当然の成り行きだった。
「森田、仕事は」
「あ゛――――!!!!」
どこまでも、人騒がせな彼らである。
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というか私の実体験。