「だぁぁああ! ついてくんなや!」
「別に僕がどうしようと僕の勝手でしょう」
「ワイに迷惑がかかっとる時点でオドレの勝手は認めん!」
「またまた〜原田さんも嬉しいくせに」
「どこがやねん!!! オドレ一回病院行って来いや!」
様々な人間が集まる東京の街、そこに異色ながらも出来立てホヤホヤの一組のカップルがいた。
男同士であり、年齢が離れている事もあり、片方が一見してそのスジの者以外には見えないサングラスに白スーツと言ういでたちをしているが為なのか。
ランチを外で食べたら気持ちいいだろうなと言う青空の下、オフィス街にぽつりぽつりと点在する昼間の公園には、幸か不幸か二人以外には誰も居なかった。
尤もその理由は、コテコテの大阪弁でドスのきいた怒声が怖くて、OL以下が公園に入れなかったと言うのが本当の所であるが、そんな事はどうでもいい。
「ひろ…お前何しに来たんじゃ」
「え、何を今更。原田さんに会いに来たに決まってるじゃないですか」
「ワイは仕事じゃ! オドレは…! ……いや、もうええわ。何も言うな。疲れた」
白スーツの男、原田克美は眉間に皺を寄せ、はぁ‥とマリアナ海溝よりも深いため息を一つ。
その溜息が示すところの意味はきっと諦めだろう。
赤木の死後、真っ当なサラリーマンから雀ゴロもどきになったひろゆきは、裏の世界に戻ってきてしまった。
裏を知っているとは言え、ひろゆきのそれは表面を撫でていただけ、原田のようにどっぷりと浸かっているわけではなく、表世界で生きる事も出来た。
なのに、ひろゆきは捨てた。
赤木に何を言われたのか詳しい事は知らないが、成功しなくてもいいという、その言葉だけで。
ひろゆきの葛藤がどれ程のものだったのかは、正確に汲み取ることはできない。
しかし原田だからこそ、日の当たる世界を捨ててまでの価値があるとも思えないのだ。
表にしろ裏にしろ、その世界にあった人間というものがある。
原田は後者、全てを捨てても今まで取ってきた肩書きの名残と言うものがある。裏の世界でしか生きられない。
けれど、ひろゆきは前者だ。表の世界で得たものが多く、裏の世界では残すものがない。
一時は繋がった縁だが、裏の世界はひろゆきには汚すぎる。
だから表の人間がただ非日常に憧れていただけだと、原田はそう思っていた。
だと言うのに。
「僕ね、本当に今が楽しいんですよ」
そんな風に何者にも縛られない笑みでこっちを見るから、感情で理が引っ張られてしまう。
裏に巻き込みたくない気持ちよりも、己の心が優先されてしまう。
原田とは違って積み上げることを止めたひろゆきにほだされる。
「……オドレは正真正銘のアホやな」
そうしてわしゃわしゃと髪の毛をかき混ぜるようにして撫でれば、はい、と元気な声が公園に響いた。
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最早別人である(ひろが)。
そして誰が何と言おうとひろ原なんだっ…!